2023.1.6 新春フォーラム「日本の大学は卒業を難しくするべきか」

講義という形でのインプットはなしに、日本の大学における卒業難化の是非について率直な意見をぶつけ合い、日本の大学生の学問への向き合い方を改善する方法について検討した。

【背景】

日本の大学は、卒業の困難さの点で海外大学と比較されることが多い。日本の大学生の水準が低いという問題から卒業を難しくするべきという声がある一方で、卒業要件にゆとりがあることで、在学中にサークル活動などに精を出し、大学卒業までの時期を学業以外の人間形成や社会勉強のために活用できるなどのメリットが存在することも確かだ。大学とは何を学ぶべき場所で、それが社会にどう影響するのだろうか。

【グループ・全体討論】

賛成派の意見には、「真面目に勉強させる手段としては卒業を難しくすることが最適だ」、「そもそも大学は学問を追求することを目的に作られたので、その意義を取り戻すべきだ」、「学内で学業モチベーションに大差があることは、やる気のある学生にとってよい環境とはいえない」、などが挙げられた。反対派の意見には、「卒業が難化し留年した場合、生活費を賄うためのアルバイトが原因だったとしても、奨学金がストップして通えなくなる」、「今日社会で求められているスキルは学業とは関係のないものが多い」、「ただでさえ都市と地方の教育格差が問題視されるなか、卒業の難易度が上がれば大学進学率自体が低下する」、などが挙げられた。その後反対派から代替案として、「履修登録する際に志望理由書を提出させる」、「ディスカッションでの発言量や質自体を評価の対象にする」、「授業の冒頭で小テストを課し予習を促す」などの提案があった。しかしこれらは結果として卒業の難化に繋がるとの気づきから、話題は大学の存在意義に移った。ここでは「学問を社会貢献につなげることで、学術的な研究の資金を得ることができる」や「そもそも就職活動のスケジュール(大学3年のまたは大学院1年の春から始まる)が学業への集中を阻害しており、大学のあり方よりも社会システムの方に問題があるといえる」などが挙げられた。

【全体私感】

賛成反対に分かれたものの、大学が形骸化し学問的な意義が薄れていることに危機感を感じているという点で両者は共通していた。討論の結果、大学とは知的好奇心を燃やすコンテンツを提供すべき場所であり、そのコンテンツは大学ごとにユニーク(ディスカッション中心、講義中心、リベラルアーツ、ダブルメジャーなど)があるべきだとの気づきを得た。また、大学をひとまとめに変えていこうとするのではなく、選べる幅を持たせることは結果として学生の学業に対する主体性を高めることにもつながると感じた。その一方で大学のあり方に変化を加えることには、様々なリスクも伴う。反対意見にもあったように、奨学金を借りている学生が卒業難化によって留年し大学に通えなくなれば、最終学歴が高卒となり就職の幅を狭めてしまう。大学が特定の層に寄り添いすぎないように、方法だけではなくその程度についても丁寧な検討が必要であると考えた。

立教大学現代心理学部3年 松矢花奈

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