2017.9.29 KIP 9月イベント「ロシアにおける原子力技術への挑戦と課題」
ポル・ミッシェル氏:フランス出身のKIP留学生メンバー。

ポル・ミッシェル氏:
フランス出身のKIP留学生メンバー。現在は東京大学大学院でバイオエンジニアリングを専攻。

本フォーラムは二部構成となり、前半はミッシェル氏のご講演と質疑応答、そして後半は講義を踏まえて「ジェンダー平等を実現させるためには、個々人の行動か法整備、どちらがより効果的か」をテーマに設定し、学生同士で英語ディスカッションを行いました。

ミッシェル氏はフランスにおけるジェンダーについて法的側面から説明くださった後、現在の政治や職業、広告といった側面から見るジェンダーの不平等についてお話くださいました。はじめに、フランスの1946年憲法前文に触れ、すべての分野における男女の平等が定められていることを紹介しました。次に政治分野に話が移り、オランド大統領が政権内における男女平等を実現させ、議会における女性の割合も1960年代にはわずか数パーセントだったものが2017年には40パーセントを超えていることをお話くださいました。一方職業については、ジェンダー平等にはまだほど遠いようであり、女性のほうが高学歴層が多いにも関わらず、就く仕事は子守や販売員など給料の低い職業が多いことを指摘しました。また、就業時間についても女性のほうがパートタイムの仕事が多く、男性のほうが時間外労働が多いことから、賃金の格差がより広まっていることも紹介しました。この原因として、ミッシェル氏は女性の専攻分野が文学や歴史といったアカデミックなものが多いこと、職業の種類に関するステレオタイプが存在していること、女性が自身に十分な自信を持っていないこと、夫婦内での家事の分担がうまくいっていないことの4点を考えうる原因として指摘しました。続いて広告宣伝の分野におけるジェンダー不平等に触れ、銀行員などの専門的な役割の約80パーセントは男性が演じ、たいして女性は消費者や欲望の対象として描かれることが多いことを指摘しました。広告宣伝によってステレオタイプがさらに強調されることで、職業にもジェンダー不平等が生じやすくなるのではないかと自身の見解を述べました。最後には、前向きな取り組みも紹介され、フランスで現在”parite”を合言葉に女性の政治参画が促されていることや、ジェンダー平等の実現に努めている企業に対して”equality label”を付与する取り組み等についてお話くださいました。

後半は、「ジェンダー平等を実現させるためには、個々人の行動か法整備、どちらがより効果的か」というテーマでディスカッションを行いました。全てのグループで意見が分かれましたが、個々の行動を重視する意見としては、法律が一方通行な意思表示である一方、個々の行動は周囲の人々をより喚起しやすいといった意見や、親がロールモデルとなって行動するほうが次世代に対して実質的な効果があるといった意見が出されました。一方、法を重視する意見としては、個々人の行動により影響を及ぼすことのできる範囲は限られており、多くのより人々に働きかけるためには法の整備が必要であるといった意見や、育児休暇などそもそも制度面を整備しなければ状況を改善することができないといった意見が出されました。議論の最中には、ジェンダー平等を実現させたいという想いがある一方で、完全に女性らしさや男性らしさをなくしたいわけではなく、どこまでが統一されるべきでどこからは違いを尊重すべきか、その線引きが難しいという話題が出てきました。このことに対して様々な意見が活発に飛び交いましたが、結論としてはどこで線引きしたいか否かの感覚は個々人によって異なるものであり、「女性だから」「男性だから」という理由で画一的に扱うのではなく、個々人として尊重されるべきであるという結果に至りました。

短い時間でしたが、現在日本でも、また世界でも叫ばれているジェンダー平等について再考する非常に良い機会となりました。ミッシェル氏、この度は素敵なご講演をありがとうございました。

(石野瑠花)

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